糸治の田屋
中村家別邸
2004年解体
庭園側から見た母屋
「糸治」の屋号を持つ中村家は、盛岡市でも指折りの豪商家でした。その中村家の住宅は、現在、盛岡市中央公民館に移築され、国指定の重要文化財として保存・展示されています。
しかし盛岡市には、もう一つ中村家の栄華を示す建物があったのです。それが、糸治の田屋こと、中村家別邸でした。
縁側のガラス戸組子障子
2002年に中を調査させていただきました。建物のモダンさ、立派さはもちろんでしたが、中村家のあるエピソードが心に残りました。
この別邸の庭にはバラ園があるのですが、そこのバラが、ヨーロッパ(パリ?)で行われたバラの品評会で優勝(だったかな?)したお話でした。
会場までの輸送には、専用の定温航空コンテナを用意し、審査のときに最良の咲き具合になるよう温度を調整したそうです。見せていただいたアルバムには、空港で飛行機にコンテナを積み込む様子や、表彰式のモノクロ写真が張ってありました。
2004年までに庭も含めて、ここの建物は全て解体されました。解体時には何度か訪れましたが、現場には入れませんでした。
今では駐車場になっています。もし写真が残っていなかったら、あの御屋敷での時間は夢だったのではないか、と思ってしまいそうな記憶です。
出典:国土地理院、グーグル
左が1976年、右は2020年。現在の駐車場全てが中村家の敷地でした。